賃貸住宅は住宅全体の約4割を占めていますが、近年の人口減少や住宅の供給過多により、空き家の増加が問題化しています。また、賃貸不動産管理業を中心にした法規制がなく、敷金返還などのトラブルも目立ちます。
賃貸住宅管理に関するクレームも複雑化し、適正な管理が行き届いていないケースも見られます。そこで管理業務の適正化を図るために、国土交通省は平成23年に賃貸住宅管理業の登録制度を創設しました。平成28年の法改正で賃貸不動産経営管理士は賃貸住宅管理の一定の業務を担うようにルール化されています。
賃貸不動産経営管理士になるには資格試験を受けることが必要です。不動産業に従事している方だけでなく、家主や不動産業界に就職・転職を考えている方など、毎年多くの人が受験します。
賃貸住宅管理業者登録制度により、登録業者は事務所ごとに1名以上の賃貸不動産経営管理士の設置が義務付けられています。賃貸不動産管理業務は市場調査から管理業務報酬の設定、管理業務受託契約の締結から始まります。
続いて入居者募集、入居審査、賃貸借契約締結、建物維持管理・修繕、建物清掃、契約更新、賃料改定などの管理業務を行います。契約終了後は退去立ち合い、原状回復工事、敷金精算、空き室維持管理などの業務があります。
他に節税や相続に関する相談・協力業務もあり、賃貸不動産経営管理士は専門家として関わります。具体的には貸主に対する賃貸住宅管理に関する重要事項の説明と書面への記名・押印、貸主に対する賃貸住宅の管理受託契約書の記名・押印の専門業務を行います。
登録は任意ですが、賃貸住宅管理業者登録業者は国で公表しているため、オーナーや入居者は業者を選ぶことができます。賃貸不動産経営管理士は不動産管理の専門家で、資格があるとオーナーや入居者の信頼性が高くなります。
賃貸アパートやマンションを管理している不動産会社に就職や転職するときに有利です。また、金融関連など不動産に関する部門で働いている方にも役立ちます。独立開業に活かすなら、空き家の処理に困っているオーナー向けにコンサルティングを行うことが可能です。
大家業の経験がなく、不動産業者の依頼先を探している方、空き家の有効活用プランを求めている方などの需要が考えられます。国家資格ではありませんが、資格に付加価値をプラスすることで独立開業しても成功できるでしょう。
一般的なサラリーマンの平均年収が400万円前後であるのに対し、不動産業界は500~600万円の会社が多く、1,000万円を超えるところもあります。
高収入の理由は休日対応などもあり、残業が多く激務であることから年収を高く設定していると思われます。さらに資格を有していると年収が上がる傾向にあり、賃貸不動産経営管理士も強みとなります。資格があり、実務経験もある場合は未経験者よりも年収が上がります。
例えば20代で年収500~600万円、30代で600~700万円の求人例があります。管理業務とコンサルティング業務を行う会社では、賃貸営業の業務を歩合制にしているところもあるので、高収入も可能です。また、高級マンションやオフィスビル限定で管理している会社は、基本給が高く、さらに歩合給で高収入を得られます。
賃貸不動産経営管理士は、不動産業界に就職・転職を目指す方、不動産業務を担当する金融関連に勤務する方が多く受験しています。また、不動産業者から賃貸経営を行っている家主、不動産投資を検討している方、主婦、一般の社会人なども多いです。
不動産関連資格として注目を集めており、現在まで約3万人を超える有資格者が誕生しています。賃貸住宅管理業者登録制度の普及に伴い、今後も業界の資格のニーズは高まることが期待されます。
現在、試験の難易度は比較的易しいですが、年々合格率が引き下げられ、今後、難易度は上がることが予想されます。なるべく早い段階で受験するのがお勧めで、公式テキストや過去問で学習することで効率的な学習が可能です。
特にありません。登録する際には一定の要件があります。
平成26年度76.9%、平成27年度54.6%、平成28年度55.9%、平成29年度48.3%と年々合格率は下がっています。
毎年11月第3日曜日に全国11都市で統一試験が行われます。
12,960円(税込)です。
マークシート方式の四肢択一で40問出題されます。
◎問題例(一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会公式サイトより)
敷金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1.敷金の預入れには、停止条件付返還債務を伴う金銭所有権の移転という法的性質がある。
2.敷金の預入は、賃貸借契約締結と同時でなければならず、契約締結後に敷金を支払う特約には効力がない。
3.借主が貸室の一部を毀損したにもかかわらず原状回復工事を行わず退去した場合は、貸主は、毀損に対する損害賠償債務に敷金を充当することはできない。
4.借主が賃貸の2か月分相当額を敷金として貸主に預けている場合、借主は、賃貸借契約期間中に貸主に対して、敷金返還請求権を2か月分の賃料支払債務と相殺することができる。